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【 タップ開発中?? 】

掲載日 2022-08-19

ウチにはタップはたくさんある、おそらく数千ピース。
だから、ポケットに合うタップを探しているならば、手持ちのタップから付ければ良いのではな〜い?きっとほとんどの人はそう思うのだろう。

でも私は、というか私の今までの生き方ではその選択はゼロだ、最初から全く考えない。買い集めるのが好きというのもあるけどね。
例えば赤箱のチャンピオンみたいな物、となると手持ちでは200ピース程しかない。うんと昔の径が15mm程もある分厚いプロフェッショナルと言ったって、せいぜい500ピースかな?
そんな数ではすぐに雲散霧消してしまうのだよ、経験でわかる。

だから本当に良いタップが出来れば2000ピースは手許にほしい。
私的には良い牛皮のタップはそれだけ値打ちがあるのだ、希少なのだよ。
また、山のてっぺんがほんのりと反発があることもとても重要で、ただ硬いだけの物はあまり私のタイプではない。

今から40年前のタップは大体が牛の1枚皮だった。
シャンディバーから出された物はほとんどフランス製であった。
この辺りのことはいずれまた…であるが、お話したいと思う、歴史なのだ。


昔の牛皮のタップは本当に分厚い。
水牛の顔、頭の皮を使ってタップを作っていたと耳にしたことがあるが、真偽は定かではない。
食用として肉、内臓は取り、皮革は様々な生活用品となった。
使えずに残った顔、頭の皮をビリヤードのタップ用にあてた…
頭の部分は厚くてTipにとても向いている… そう教わった次第。

現在手に入る牛皮のタップは厚いもので6〜7mmのトライアングルだと思う。
トライアングルというタップは昔からずっと品質がコンスタントである(と私は感じている)。
なかなか良いのだが、日本国内には15mmがほとんど入ってこない。
15mmのものを手に入れる機会があれば是非試して頂きたいね、Goodだ!!
それに比べるとProはかなり品質に差があったりする。
40〜50年前の物は本当に良かったのよ。
ツヤ、光沢、くいつき、反発力…大好きであったが、何故なのかは知らないけどどんどん劣化している。
これはチャンピオンも同じだし、クラウンも同じ傾向にある。
バサつき、すぐ硬くなり、滑るようにかまなくなってしまう。

皮革業の人達に、ビリヤードのタップに向いた部位をこちらの思ったようにナメしてほしいと訴えてもまず絶対に通らない。
ハンドバッグやベルト、靴などの業界にとって扱いやすい品質、鞣し方、管理の手間がかからないような素材にどんどん移行していくのである。
このあたりはシャフト材として我々が血眼になって買い求め寝かせるメープル材とかなり似たような状況なのだろうかと理解している。
我々は重くてミネラルの入った生きた材が欲しいが、マーケットにはスカスカの軽い死んだ材ばかり…。
管理が楽で気を使わない、…どんどん弱い材になり、それを集成材にして何とか利用する…。

昔の牛は皮が厚かった、今は薄い…と言うけれど、
我々にはそれ以前に皮の処理の仕方が違っているように思える。
これはド素人の考えで合って確信はないことはここにお断りしておく。間違ってたらゴメンナサイ…である。



私が今回牛の皮のタップを開発してくれる、というお話に乗ったのにはいくつかの理由がある。

まず第一に、タイミングが良かった。
ウチのキューにはILC Cueと9Heartsの2ブランドがあり、本数的には極少生産であるが、国内にも少し、海外にも少し販売している。
海外のトッププロにも気に入って頂き、用具の提供をしたこともある。
でも、いつも私の方で付けるタップについてははずされてしまうのだ。
プロアマ問わず、である。
キューについての非難・苦情はまぁほとんど耳にしたことはない。
でもタップは本当にずっとずっとダメ!!どれを付けてもダメなのだ。
私が良いと思う物を付けてもどうせ外されるなら、タップを付けない状態で出そうか… 一時は本当にそう考え、髪の毛が抜ける程悩んだものだ。どうしたら良い…カロヤンか…それどもアートネーチャンか…
とにかくここ数年は色々試したけど納得できるものに出会えなかったの。
周りが良いというのは私には合わない、さっぱり球にならない、美しくない。
球撞きは美学なのだ…、人生観が出るわけなのだよ。
それでも2種類は常時手に入れたけど、自信を持ってお薦めできるかと問われれば正直微妙なところだ。
なぜかと言うと、「私の手には合わない」から。
ずっと乗り気ではなかったところに、今回のタップ製作のお話である。
私が喜んだのはお分かりいただけると思う。
駄目でもともと。今の使っているタップは自分にはペケなのだから、周りの評価は気にせず自分中心にいこう。

次に気に入った点は…
タップの開発者のストロークを見ていたら私のように柔らかい。
取り方もきれいで、ポジショニングに秀でていると感じたこと。
いつも書くことであるが、生魚を食べない寿司職人の握る寿司は食べられない。
当然だよ、ネタの厚みも一緒、温度も一緒、シャリも一緒…
寿司職人なんて一年でなれると言ったのはホリ△モンだったけど、それはホントに美味なものを食べたことがないか間違った冗談のつもりなんだろう。
球を撞けない人間が作ったタップは合わない。
球を撞けない者が良いキューを作れるわけなどない、と口を酸っぱくして言う所以でもある。
戻ると、彼の球は私と少し似ているのだ。ピン!!と来たわけである。
もしかして私のタップに持っているボヤっとしたイメージを彼なら具現化してくれるのではないか… そう思った次第である。愉しみであるね。

もうひとつの決め手は彼のお人柄。
私とはかなり年令は違うけれど、まるで隠し事が下手でわかりやすい。
私もあまりお世辞は言えなくて、思ったことをすぐ口にする軽い人間。
外見は全然似てないけど、意外と合いそうな気がしたの。
それで会うなりすべてお任せしようと決めってしまったわけである。
私は何も知らないので任せるしかできない…実に気楽な立場である。




ここで前回のテーマについての解説を書こうか…
豚は個数では90%、金額では99%の件である。

牛皮と豚皮の違いを少し書いてみようか。
みんなご存知と思うけど、私は知らないので間違っていたら教えてね。

今まで書き記した通り、牛は基本的に一枚皮である。
それにファイバーとか皮ベースの座が付いていることもある。
これは先角を守る為でもあるし、先角との繋ぎでもある、硬い物を挟んでいるのだ。
しっかり接着できるように…ということだと思う。

基本一枚皮ということは、牛の面の皮は厚いのだよ、繊維質の部分が太くて多い、従ってチョークのノリも保持も優れているわけである。
一枚皮は最初は悲惨である。柔らかいのでボールは保持するけど全く反発力がない、潰れてしまうのだ。
一時間程、中心付近のショットのストローク練習をして、先角からはみ出ている部分を切り落として整形する。そうしてまた一時間程ストロークの練習… 忍耐。
球が入る、入らないは気にしない、修行僧のように黙々と撞くだけだ。
これを多分3回程すると、もうかなり表面は鍛えられている。
少し神経の鈍いぐらいの人がこの作業工程には向いているよ。
私なんかはせっかちなので、コーヒー飲みながら手球を手に取ってタップをガシガシやってしまう…これはまずうまくいかない、やっちゃダメ!!
タップは硬くなりすぎて、ブレイクタップのようになってしまうのだ。
こうなるともう一度最初からやり直し…

こうして一枚皮の中を少し丁重に育てると、まぁ普通は1年間は余裕で使える。
2年とか3年というのもザラである。
少しずつ薄くなっていくけど、それはそれでその打感を愉しめる。

これに対して豚皮の場合。
豚はもう全部積層である。8枚とか10枚とか、その位の枚数が基本的かと思う。
積層ということは薄い皮と接着剤の繰り返しである。

牛皮との大きな違いが2つ、イヤ、3つある。
まず、豚は最初から使いやすい。これが売りだ。良いでしょ!!
そして、牛のように側面が膨らまない、手間いらず!
それから、豚の宿命なのだけど、硬くなったらもう交換サイン、わかりやすい!!
使用時間としては大体50〜90時間程か、もう少し短いかも??
私なんか昔は打感がイヤですぐ交換、ミスキューで交換…、あちこちの知り合いと良く情報交換…
付けてすぐ調子よく使える豚と、しばらくは修行僧のように忍耐が必要、
手を掛けなくてはならない牛とでは、現代は豚が好まれて売れているのだ。
間違いない。

豚はまぁ1か月使うとする、それに対し牛は1年。
同じ数のプレイヤーが使っていると豚の消費量は12倍だ。
これが90%の売上数、販売数という理由である。

そしてもう一つの違いは単層と積層では売り上げが10倍違う。
イヤ、6、7倍ぐらいか?1個400円と2500円とかだよ。
積層は使う革の面積が広くて塗る接着剤も多い。
買う側からそう見えるわけである、間違いない。
これが99%の額は豚であるといった裏付けだ。






今日の結論からのさらなる考察。

では、どうしてこのような豚皮一辺倒のような時代になったのか?
次回はこのテーマに鋭くスポットを当ててみようと思う。

髪がウスくなった分、乱反射するかもしれないけど、
ポケットの業界のことを少し理解できるかも、である。